歌までの適度なイントロの長さ
歌モノの曲の場合、イントロがあることが多いですが、イントロそのものの長さを意識したことがあるでしょうか?
実はこの長さがポイントでして、
長すぎると”人に聴いてもらいにくい”という傾向があります。
音楽は時間芸術です。
歌が始まる箇所まで、リスナーがじっと待っていなければいけないのですね。
写真や絵は、パッと見てどんな作品かすぐ分かるので、じっくり眺めたければ、その人の感覚で長くも短くも鑑賞時間をコントロールできます。
音楽やお芝居などは、そうはいかないところが面白いところでもあるのですが(笑)
同じく時間軸に左右される映像の世界で、ネット上の動画の再生時間についても、よく検証されています。
YouTubeを例に上げると、再生ボタンを押してからどのくらいで視聴ストップされてるのかですが、
最初の関門が30秒
2位が60秒
3位が90秒
こんな順位のタイミングで停止ボタンが押される傾向が分析されています。
もう少し詳しく見ていきますと、最初の30秒までで、何となくその作品の様子、雰囲気、何を伝えようとしているのか等、全体像を捉えようとする時間。
30秒から60秒までで、その作品を見たいかどうか判断する時間。
次の60秒を超えて、90秒まで行く場合は、見たいと決めた。で、その先の展開は?と、期待を持っているケースです。
90秒を超えると、最後まで再生される割合も増えて行きます。
要するに、人間の脳はそんなに待てないのです。
見ている側は、自分自身にとって興味が持てる作品かどうか、時間をじっくりかけて確認するようにはできていないのですね。
これは音楽も同じでして、歌モノであればイントロはあくまでメインが来るまでの装飾です。
イントロが長すぎると、聴いているリスナーもどんな歌なのか分からず、ずっと待ち続けることにフラストレーションが溜まるものなんですね。
もし、固定のファンがいたり、オーディエンスにじっくりと聴いてもらえる条件であれば問題ありません。
オーディションや、初めてのお客さまの前での演奏、ネットを通した作品発表などの場合は、イントロを30秒以下に抑えると、その後も積極的に歌を聴いてもらえるようになります。
目の前で演奏する場合は、反応が分かりにくいですが(笑)、録音媒体になっている場合、停止ボタンを押される割合が高まります。
さて、ドラマ「ファーストクラス」の主題歌になっている、安室奈美恵さんの新曲「BRIGHTER DAY」のイントロの長さを計ってみました。
イントロ開始から歌が始まるまで18秒です。
その前に、10秒あたりから安室ちゃんの声のフェイク(「ラララ~♪」みたいなのですね)が入ってます。18秒じっくり待つ前に、オマケがついてる感じ(笑)
もうひとつ、ロングバージョンがあって、イントロ開始から歌まで約30秒。
フェイクから歌始まりまでの時間は変わりませんが、導入部分が長いバージョンがありました。
この主題歌は、ドラマの後半からエンディングにかけてお芝居と重なるように編集してありますが、前者の18秒版はドラマの展開、放映回数が中盤頃までに使われていました。
最近、ストーリーも佳境に入り、最終回も目前で盛り上がってきたあたりで、後者の30秒版のロングバージョンに変更されています。
ドラマの主題歌といえど、この歌が視聴者に定着するまで、ロングバージョンは封印されていたということです。
知っているおなじみの曲がのイントロ流れてきても、すぐに歌に入らない演出。
知っているからこそ、期待値を上げる工夫なんです。
まだ知られていない曲、知っていたとしても人の心の中でヘビロテ状態に好まれるまで、少しばかり時間(日数)がかかりますから、その時期まで待つ。
安室ちゃんでも、多くの人に歌が届くよう工夫しているわけですね^^
聴きたい(待てる)タイミングに歌を始める、期待値を上げる工夫、どちらもリスナーへの思いやりとも言えるかと思います。
余程、どんな曲でもリスナーに対して聴いてもらえる前提でなければ、イントロが1分ほどある曲の場合、”長い”という印象がついてまわりますので、最低でも30秒以内に抑えると効果的です。
ここまで、イントロの長さについて書いてきましたが、オーディションなど勝負の場合は、イントロなしのサビ始まりの曲を用意しておくのも有効です。
といっても、サビ始まりの曲ばかり作るわけにはいきませんから、それ以外の曲の場合の対処法も後日、書いてみたいと思います。